SAP HANA(エスエイピー ハナ)は、ドイツのソフトウェア企業SAP SEが提供するカラムストア指向リレーショナルインメモリデータ処理プラットフォームである[1]。狭義には中核コンポーネントであるインメモリデータベース機能のみを指すが、広義にはHANA用アプリケーションの実行環境や開発環境などの周辺機能を指すプラットフォーム全体を指す。
SAP HANAは、全てのデータをメモリ上に保有し、高速に処理するための企業向けインメモリデータベース製品であり、企業の基幹システムや情報系システムのほか、研究データ解析、スポーツ分析などの用途に幅広く利用されている。提供形態としては、パブリッククラウドエディション、プライベートクラウドであるマネージドサービスエディション、オンプレミスエディションがある。
SAPの創業者の一人であるハッソ・プラットナーが設立した研究・教育機関「ハッソ・プラットナー・インスティテュート」で学生らと共に発案した[2]。近年[いつ?]の情報システムのビジネスへの浸透によって、ERPなどの業務アプリケーションが多機能化して肥大化し、更に複数の異なるシステムやデータベースが企業内で乱立するようになっていた。こうした複雑化した企業システム群をシンプル化しボトルネックを解消するために、複数の業務アプリケーション跨るデータを1つのプラットフォームでリアルタイムに処理するためにSAP HANAが開発された[2]。
SAPではSAP HANAを同社事業の中核製品に位置付けており、SAP HANA上での利用を前提としたアプリケーションとしてSAP S/4HANAやSAP BW/4HANAなどの提供を開始した[3][4]。ただ、SAP HANAはSAP製のアプリケーションだけでなく、一般的なリレーショナルデータベース製品と同様、他ベンダーのアプリケーションもHANA上で実行させることができる[1]。
2020年5月時点で、世界で32,000社超(社名公表に同意した顧客数)で稼働実績があると発表された。[5]
Linux環境のみで稼働し、Red Hat Enterprise LinuxとSUSE Linux Enterprise Serverのディストリビューションがサポートされている[1]。
SAPより認定され、SAP HANAに最適化された専用サーバー(アプライアンス)でのみ稼働する[8]。ラインナップは米IBMや米HP、米ユニシス、米デルなどのサーバーベンダーから販売されている。日系ベンダーでは富士通、日立製作所、日本電気が製造、販売している。[9] また、アプライアンスを購入する代わりにSAPが提供するプライベートクラウドプラットフォームサービスSAP HANA Enterprise Cloudを利用することもできる。[10]
更にSAPはマルチプラットフォーム戦略を推進しており、Amazon Web Services、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなどの認定された主要なパブリッククラウドサービス上でも利用できるようになっている。[11][12][13]
ノートPCやデスクトップPC上でオフラインで実行可能なバージョンである「SAP HANA, express edition」が無償で提供されている。[14]
Red Hat Enterprise LinuxやSUSE Linux Enterprise Server上で利用できるほか、仮想マシンイメージをダウンロードして、WindowsやMacにインストールも可能である。[14] Amazon Web Services(AWS)などのクラウドプラットフォームでも利用できる。[14]
但し、試用版は最大メモリサイズは32GBまでに限定されている。[14]
SAPはSAP HANAの知識や技能を持つエンジニアやコンサルタントに対してSAP認定コンサルタントの資格を認定している。所定の研修コースを履修し、試験に合格すると申請できる。2016年10月現在、日本では以下のHANA関連の資格が存在する[15][16]。