開発者 | Apple |
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OSの系統 | iOS |
ソースモデル | オープンソースのコンポーネントを使用したクローズドソース |
初版 | 2012年9月19日 |
最新安定版 | 6.1.6 (10B500) / 2014年2月21日 |
プラットフォーム |
iPhone
iPod touch iPad |
カーネル種別 | ハイブリッド(XNU) |
ライセンス | プロプライエタリソフトウェア |
先行品 | iOS 5 |
後続品 | iOS 7 |
ウェブサイト | Apple - iOS 6(ウェイバックマシンによるアーカイブ) |
サポート状況 | |
終了 |
iOS 6(アイオーエス シックス)は、Appleが開発しているモバイルオペレーティングシステムiOSの6番目のメジャーリリースである。2012年9月19日にリリースされた[1]。
2012年6月12日、WWDC2012で発表された。約200以上の新機能が搭載され[2]、今回のアップデートではアプリの追加よりも既存のアプリの改良や新機能が中心となり、GUIにも変更が見られる[3][4]。このバージョンで、iPad (第1世代)とiPod touch (第3世代)がサポートされなくなった[5]。発表当日、開発者にはベータ版をリリース、2012年9月12日に関係者向けに開催されたイベントで9月19日に正式版をリリースすると発表された[1]。
対応端末は、iPhone 3GS以降、iPod touch (第4世代)以降、iPad 2以降、iPad mini (第1世代)。
iOS 5までサポートされたモデルのうち、iPod touch (第3世代)、iPad (第1世代)がiOS 6以降においてサポート対象外となった。
iOS 7のリリース以後もiOS 7以降においてサポート対象外となったiPhone 3GS、iPod touch (第4世代)向けに不具合修正のためのアップデートがリリースされ、最終バージョンは、2014年2月21日にリリースされたiOS 6.1.6。
iOS 6の評判は上々だった。批評家は、iOS 6が大幅な速度向上や大規模なデザイン変更をもたらすものではなく、改良に重点を置いたものであることを指摘した[4]。 iOS 6は「端末の使い方を完全に変える」ものではなかったが、「それぞれの微調整(省略)は、スマートフォンの日常的な操作の多くを全体的に容易にする」ものであり、「すでに非常にうまく機能しているもの」を改良することは「他の企業が見習うべきこと」であると指摘した[6]。
しかし、Apple マップのリリース時には、データが不正確であったり、不完全であったりしたため、大きな批判を受けた。この問題を受け、Appleの最高経営責任者(CEO)であるティム・クックは公開謝罪文を発表した。創業以来、iOSの開発を指揮してきたスコット・フォーストールの解任の一因ともなった[7]。
iOS 6では、Google マップに代わってApple マップAppが追加されたほか、ポッドキャストを集中管理できるPodcast App、各種チケットや搭乗券、クーポン、ポイントカードなどを管理できるPassbook App(現Apple Wallet)などが追加された[8][9]。App Storeのビジュアルが一新され、カードベースのAppレイアウトが採用されたほか、検索アルゴリズムの調整が行われた[4]。FacebookはOSレベルで連携され、ステータスメッセージ、いいね!ボタン、連絡先やイベントの同期などがAppleの純正Appに組み込まれた[8]。新しいプライバシー管理機能により、Appの許可をより細かく設定できるようになり、ターゲット広告を防止するオプションも追加された[10][11]。Siriは、より多くの端末に追加され、レストランの予約、Appの起動、映画のレビューやスポーツの統計情報の取得、通知センターの読み取りなどの機能が追加された[8]。
AppleのバーチャルアシスタントであるSiriは、iPhone 4Sの発売と同時にiOS 5で導入され、レストランの予約、アプリケーションの起動、通知センターの読み取り、FacebookやTwitterの新規投稿入力、映画のレビューやスポーツの詳細な統計情報の取得などの機能が追加された[8]。
Siriはイタリア語、韓国語、広東語に対応し、iPhone 5、iPod touch (第5世代)、iPad (第3世代)に対応した[12]。
iOS 6では、Appleの一部の純正AppにFacebookの機能が組み込まれた。カレンダーAppでFacebookのイベントを同期、連絡先AppでFacebookの友だち情報の表示、App StoreやGame CenterにFacebookの「いいね!ボタン」の搭載などの機能が追加された。通知センターのウィジェットから、Facebookに直接投稿することも可能になった[8][13]。
iOS 6では、設定Appに複数の変更が加えられた。Appアイコンが、AppleのコンピュータOSであるOS X(現macOS)の「システム環境設定」のアイコンと同じになったほか、電話の音を鳴らさないようにする「おやすみモード」が追加された。また、「おやすみモード」では、特定の連絡先からの電話を許可したり、何度も電話がかかってくる場合に2回目の電話で音を鳴らすなどの設定が可能である。なお、「おやすみモード」が有効な場合は、ステータスバーに三日月のアイコンが表示される[6]。
iOS 6には新たなプライバシー設定が追加された。位置情報サービスに加え、連絡先、カレンダー、リマインダー、写真などの各種プライバシー設定が追加され、Appごとにプライバシー許可をより細かく制御できるようになった。また、Appが各カテゴリーの情報へのアクセスを希望する際には新たな通知が表示されるよう仕様になった[11]。
また、iOS 6には、ターゲット広告を防止する「広告トラッキングの制限」の設定が搭載されていた。Appleの「Advertising Identifier」は、「広告ネットワークが使用する非永続的で個人を特定しないデバイスの識別子で、広告主がトラッキング手法を使用することを利用者がよりコントロールできるようにするものであり、広告のトラッキングを制限することを選択した場合、Advertising Identifierを使用する広告ネットワークは利用者にターゲット広告を提供するための情報を収集しなくなる」としている[10]。
iOS 6.1では、広告会社が使用する識別子をユーザーがリセットできる「広告識別子のリセット」設定が追加された[14]。
iOS 6では、通知センターにTwitterのウィジェットが追加され、直接ツイートできるようになった[15]。
共有メニューのインターフェースが更新され、コンテンツを共有できるさまざまなアプリケーションのリストではなく、アイコンのグリッドが表示されるようになった[16]。
Google マップに代わって、新しいApple マップAppがOS上のデフォルトの地図Appとして採用された。Appleのベクターベースのエンジンを使用しており、よりスムーズな拡大・縮小が可能になった。また、音声ガイド付きのターンバイターンナビゲーションや、一部の地域での3D表示、一部の主要都市を回る「Flyover」機能、交通状況などが新たに搭載された[8]。
配信当初、ターンバイターンナビゲーションはiPhone 4S以降およびセルラーモデルのiPad 2以降でのみ利用可能で、FlyoverはiPhone 4S以降およびiPod touch (第5世代)、iPad 2以降でのみ利用可能だった[12]。
搭乗券や入場券、クーポンやポイントカードなどを1か所にまとめるPassbook App(現Apple Wallet)を新たに追加した[8][17][18]。
Passbookを搭載したiOS端末をスキャンすることで、物理的なカードに代わって、対象店舗でのモバイル決済を処理することが可能になった。特定の店舗の付近を通ると関連するクーポンを通知する機能や、空港にいるときに搭乗券を自動的に表示し、ゲートの変更を通知する機能など、状況に応じた機能が搭載されている[8]。
カメラAppは、240度のパノラマ写真が撮れるパノラマモードが追加された[19][20]。
写真Appのフォトストリーム機能がアップデートされ、画像を削除したり、独自のフォトストリームを他人と共有したりできるようになった[8][6]。
iOS 6のApp Storeでは、ユーザーインターフェースが一新され、「カテゴリー」タブが削除され、Appleの検索・推薦エンジンである「Genius」が追加された。各Appの表示は、リスト表示ではなくカード表示に変更された。また、App Storeの検索アルゴリズムにも手が加えられ、「新しい会社を優遇する傾向」が見られるようになり、開発者からは懸念と称賛の声が上がっている[21][4]。
iOS 6では、着信時にロック画面を上にスワイプすると、「メッセージで返信」や「あとで通知」のメニューが表示されるようになった。「メッセージで返信」機能では、あらかじめ設定されたいくつかのメッセージが表示され、独自のメッセージを選択することもできる。「あとで通知」機能では、1時間後、帰宅時、現在地を離れる時など、いくつかのオプションが用意されており、リマインダーを有効にすることができる[22]。
iOS 6では、ポッドキャスト機能がiTunes Appから切り離され、独自のPodcast Appが提供された[23][9]。
ウェブブラウザのSafariは、iPhoneおよびiPod touchの横向きのフルスクリーン表示が可能になった[24]。
iOS 5から搭載された「リーディングリスト」は、保存された記事のテキストや画像、レイアウトなどが保存されるオフライン機能に対応した[25]。
FaceTimeのビデオ通話は、Wi-Fiだけでなく、携帯電話回線でも利用できるようになった[26]。
iPhoneやiPod touchで搭載されていた時計Appが、iPadでも利用できるようになった[27]。時計のデザインがスイス鉄道時計に似ていたことから、Appleはスイス連邦鉄道と契約を結び、デザインを自社で使用することにした[28]。
Appleが開発したiOSの純正AppだったYouTube Appが削除された[29][30]。AppleはThe Vergeに対し、削除の理由はライセンスの有効期限が切れたためであると説明しており、YouTubeはウェブブラウザのSafariで動画を見ることができるとしている。また、YouTubeを所有するGoogleが独自のAppを開発しており、App Storeでのリリースを予定していることも確認している[31]。Appleが開発したYouTube Appは、iOS 5以前には残っていた[32]。
2017年6月、YouTubeの元社員であるハンター・ウォークのツイートによると、AppleがYouTubeに連絡を取り、初代iPhoneのデフォルトAppにすることで、動画共有サービスのモバイル市場への導入を確実にしたが、開発作業を自分たちで処理する必要があったという。2012年にYouTubeは、自分たちで開発することで「自分たちのAppのコントロールを取り戻す」ために、ライセンスを打ち切るという「度胸のある行動」をとったという[33][34]。
iOS 6は、2012年6月11日に開催されたApple Worldwide Developers Conferenceで発表された[2]。
iOS 6は、2012年9月19日に正式にリリースされた[1]。
iOS 6のアップデートについて[35][36][37][38]。
新機能・変更点(6.x) | ||||
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バージョン | ビルド番号 | 配布開始日 | 内容 | 出典 |
6.0 | 10A403 10A405 10A406 10A407 |
2012年9月19日 |
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[40][41] |
6.0.1 | 10A523 10A525 10A8426 |
2012年11月1日 |
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[42] |
6.0.2 | 10A550 10A551 10A8500 |
2012年12月19日 |
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[43] |
6.1 | 10B141 10B142 10B143 10B144 |
2013年1月29日 |
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[44] |
6.1.1 | 10B145 | 2013年2月12日 |
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[45] |
6.1.2 | 10B146 10B147 |
2013年2月20日 |
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[46] |
6.1.3 | 10B329 | 2013年3月20日 |
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[47] |
6.1.4 | 10B350 | 2013年5月3日 |
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[48] |
6.1.5 | 10B400 | 2013年11月14日 |
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[49] |
6.1.6 | 10B500 | 2014年2月21日 |
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iOS 6は、iPod touch (第3世代)やiPad (第1世代)のサポートを終了した[5]。
iOS 6の評判は上々だった。The Vergeのダン・セイファートは、「iOS 6は、iOS 5とほとんど同じに見える。あちこちで微妙な調整が行われているが、iOSの細部の見た目に小さな変化があるたびに、変わらない部分が10個ある」と評価した。同氏は、iPhone 4Sが「キビキビとしたパフォーマンス」であることを評価する一方で、「スピードに関して言えば、iOS 6はiOS 5とひどく異なるとは感じられない」と指摘している[3]。
TechRadarのクレイグ・グラネルは、「iOS 6は、iPhone 5やOS X Mountain Lionのように、すでに非常によく機能しているものをさらに洗練させたものだ。Appleは、いたずらに何かを変えるのではなく、主にiOSエクスペリエンスを徐々に向上させている。このこと自体、他の企業が見習うべきことだと思う」と述べた[6]。
CNETのジェイソン・パーカーは、「iOS 6は、あらゆるiOSユーザーにとって歓迎すべきアップグレードだが、デバイスの使用方法を完全に変えるものではない。むしろ、今回の調整の一つ一つが、日々のスマートフォンの多くの動作を全体的に容易にし、特定の機能(メールからの画像送信や通話コントロールなど)を待っている人には救いとなるだろう」と述べている[50]。
iOS 6では、OSのデフォルトの地図サービスとして、Google マップに代わって独自のApple マップが採用されたが、川の中に美術館があったり、町が欠けていたり、衛星画像が雲で隠れていたり、場所が欠けていたりと、不正確なデータや不完全なデータがあったため、すぐに批判にさらされた[51][52][53]。
Appleの最高経営責任者(CEO)であるティム・クックは、AppleのウェブサイトでマップAppによって引き起こされた「迷惑」を謝罪する文書を発表し、App Storeから代替のマップアプリケーションをダウンロードすることを推奨した[54][55]。2012年10月、当時iOSソフトウェアエンジニアリング担当副社長だったスコット・フォーストールは、「Appleの新しい地図サービスの欠点を謝罪する手紙に署名することを拒否した」ことにより、Appleでの職務を強制的に解かれた[7]。
2012年9月、ソフトウェア会社Abineの「プライバシー専門家」であるサラ・ダウニーは、新しい「広告識別子」にもかかわらず、Appleがその識別子が実際に何に基づいているのか詳細を開示していないことに懸念を表明した。「識別できない理由を教えてほしい。なぜなら、他の多くの『識別できない』データで見てきたように、あなたを簡単に識別できるからだ」と述べ、「オプトアウトを使用している場合、(Appleは)ターゲット広告を提供するための情報を収集しなくなる可能性がある。つまり、ターゲット広告を提供する以外の目的で利用者の情報を収集する可能性があるということである。例えば、お客様にマーケティング情報を提供するために利用者に関するデータベースを構築したり、第三者に販売したりすることが考えられる」と述べている[10]。
iOS 6にアップグレードした後、利用者が通常よりも高いデータ使用量を報告しており、一部ではデータプランを大幅に超えるデータ使用量を請求されていた。ハフィントンポストのスティーブ・ローゼンバウムは、「このバグは、携帯電話がWiFi信号に接続されているときはいつでも携帯電話データネットワークに接続するというiOS 6の問題の結果である」と述べ、Appleがパッチをリリースしたことも明かしている[56][57]。
2014年4月、iOS 6を使用している利用者が、証明書の有効期限が切れたためにFaceTimeに接続できないという問題が発生した。Appleは、この問題を説明するサポートドキュメントを公開し、問題を解決するためには、iOS 7にアップグレードできる端末はアップグレードする必要があり、iOS 6で止まっている端末はiOS 6.1.6のアップデートを受けることになると付け加えた[58]。